夏場、観葉植物に水やりをしたあと、次の日にカビが生えているということがあると思います。ほかにも肥料をまいたあとなどにも、見られる場合もあります。
白や黄色の綿毛のようなカビが、土の表面を覆い尽くすので不快に感じますよね。そのまま放置しておくと、次第にきのこが生えることも。
まず、どうしてカビが生えてしまったのか、またどのように除去すればいいのか。焦って悩むこともあると思いますが、カビが生えたからといって観葉植物が枯れることはないです。
今回は観葉植物に生えるカビの原因と予防対策について詳しく紹介します。除去方法についても解説しているので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
観葉植物にカビが生えたらやばい?
土の表面にカビやきのこが生えてしまっても、観葉植物にとっては無害です。むしろ生えて当たり前というのが自然かもしれません。
しかし、カビによって生える場所・繁殖する場所が違うため、種類によっては危険なものもあります。
まずは、カビがどこから生えているのか、細かくチェックしてみてください。
土や肥料の表面に生えるカビは大丈夫
土や肥料の表面に生えるカビは、植物に悪さをするわけではなく、自然界でも一般的に見られるものです。すぐに除去しなくても特に問題はありません。
そもそもカビは菌であり、植物にとっても必要不可欠な存在といわれています。植物の種類によっては、生きるために菌(カビ)が必要なこともあります。
ただし、白絹病というカビ由来の病気には注意が必要です。白い綿状のカビの菌糸が確認できると思います。小さな丸い卵のような形の菌糸が土の表面や中に無数に広がり、植物に悪影響を及ぼします。
白絹病が恐ろしいのは、感染すると植物を復活させるのが難しいことです。感染した場合は土と鉢をすべて新しいものに取り換えて、根にはリゾレックスなどの殺菌剤を撒いて消毒します。さらに土壌細菌が含まれた活力剤を用いて、雑菌の繁殖を防ぐと効果的です。
トリコデルマ属細菌が含有された殺菌剤を使用すると、白絹病に対して拮抗作用があり、発生を食い止める効果が期待できます。白絹病は湿度が高い環境で一気に増殖する可能性があるので、水はけのよい土に変えて風通しの良い環境で管理してあげましょう。
葉の表面についた白や黒のカビは危険
観葉植物の葉の表面に生えた白や黒、または茶色のカビは、病気を発症させることがあるので危険です。
土の表面に生えるカビとは違うので、すぐに摘除する必要があります。放置したままでは、株全体に広がるだけでなく、周辺の植物にも広がる可能性もあります。
観葉植物にカビが生える原因
どうして観葉植物の土や肥料、さらに葉の表面などにカビが生えるのか。何となく湿気が原因というのはわかると思います。
しかし、それ以外にもカビが発生してしまう原因がいくつかあります。
ここでは、観葉植物にカビが生える主な原因を以下5つ解説します。
- 有機物の土や肥料を使っている
- 湿度が高い
- 日当たりと風通しが悪い
- 土が乾きにくい
- すでに鉢の中に菌が紛れている
いくつかの条件が重なることで、カビは生えます。
またカビは植物や動物でもなく、小さな菌です。菌単体は肉眼で確認することができないので、気が付かないうちに室内に侵入していることもあります。
①有機物の土や肥料を使っている
土や肥料の表面に発生するカビは、有機物の素材や成分を使っているため繁殖しやすいです。
そもそもカビは、「糸状菌(しじょうきん)」と呼ばれる糸状の菌で、胞子を飛ばして繁殖する生物です。糸状菌の他に担子菌類とよばれる種類のカビは、生長するときのこを出して胞子を飛ばし、水を含むと植物のように発芽し、根を地面に張り巡らします。
栄養は植物や動物などの有機物から得るため、発芽できる場所は有機質の素材だけです。観葉植物の土に腐葉土・ウッドチップ・バーク・ココナッツファイバーなどが含まれていると、菌がそれらの有機物に付き、大きくなって繁殖します。
②湿度が高い
カビは種類によってさまざまですが、比較的気温が0〜45℃の場所で繁殖するようです。また、その中でも観葉植物に生えるカビは、気温が20〜35℃で、湿度が60〜80%前後になると生えやすいといわれています。
気温が60℃を超えると、カビである菌は生息できないので死滅するようです。
また土が湿っていることで、カビ菌が植物の根のように奥深く、幅広く張るようです。そのため観葉植物に水やりをしたあと、湿度の高い部屋で管理していると突然カビが発生する場合も。生長スピードも早いため、一晩で土の表面を隠し、きのこが傘を開くサイズまでに大きくなることもあります。
しかしこの気温と湿度は、熱帯地域に自生する観葉植物にとっては生長しやすい環境でもあります。
③日当たりと風通しが悪い
まずはじめに、「日当たりと風通しの悪さ」が、カビの繁殖の直接的な原因ではありません。日当たりと風通しが悪くなることで、空気が全く流れず停滞します。そのため、梅雨の時期になると気温と湿度がすぐに高くなりやすく、条件がそろう数値まで上昇するとカビが生えます。
また、日当たりや風通しが悪い場所では、葉についた菌の温床となりそのまま病気にかかることもあります。
④土が乾きにくい
カビ胞子は、水を含むことで発芽します。土が乾きにくく、いつまでも湿ったままでいると、土の上に落ちたカビ胞子は発芽をし続けるため、さらに範囲が広がる場合も。
土の表面に、ウッドチップを敷き詰めることもあると思います。しかし土が乾きにくいと、チップの裏側には白いカビ菌が無数に繁殖することもあります。
⑤すでに鉢の中に菌が紛れている
肉眼で確認しにくいカビ菌や胞子は、購入した鉢植えの土や庭・畑の土にすでに混入していることがあります。消毒されていないものは、カビがよく生えやすいです。
また、風に乗って胞子が飛ばされるため、気付かないうちに窓から侵入したり、人間の衣類に付着して室内に持ち込んだりする場合も。換気扇や換気口などほかにも侵入経路はあるので、完全に防ぐのは難しそうですね。
観葉植物に生えるカビの除去方法
モコモコとしたカビの見た目は、少し気持ちが悪く、衛生的に不快と感じる方も多いと思います。観葉植物の土にカビが生えていたら、除去後に環境を変えることが大切です。
カビの除去は、以下の4つの方法でやってみましょう。カビを生えにくくする方法についても詳しく紹介します。
- 土の中に混ぜる
- 木酢液を吹きかける
- 植え替える
- 日当たりと風通しの良い場所へ移動させる
また、ピンセットなどで土の表面を取り除いて、カビを除去することもできます。ただし、あくまで土の表面にあるカビを菌糸から切り離しただけなので、環境によってはまた発生することもあります。
土の中に混ぜる
土や肥料の表面に生えるカビは、少し繁殖させたあとに乾かして枯らし、そのまま有機質の土に混ぜ込むといいです。
土に混ざったカビ菌は小さな微生物が植物が吸い上げられる栄養へと分解します。定期的に肥料を与える頻度も少なくなるため、管理の手間が減ります。
ちなみに、植物は無機質な土で育てるよりも、腐葉土やウッドチップで育てた方が最適です。有機質の土で育った植物は、日光に当たると「ファイトケミカル(phytochemical)」という化学物質をつくり、紫外線・病原菌・害虫などの植物にとって有害なものから、身を守ろうと強くなります。
木酢液を吹きかける
カビが観葉植物の葉や土の表面に発生した場合は、木酢液(もくさくえき)を吹きかけて除去するのがおすすめです。
カビ菌である糸状菌は、酵母菌なども含め世界に約150万種類が存在するといわれています。その中に、うどんこ病や灰色カビ病などの植物の病気の元となる糸状菌も多く、薬を使って殺菌をしています。
しかし、観葉植物のからだには常在菌である有効菌も住み着き、病害虫から身を守っています。そこに、強い殺菌剤を吹きかけることで、カビ菌が死滅するだけでなく、有効菌もいなくなってしまいます。
木酢液は、有効菌のエサとなる成分が含まれ繁殖させる効果があるので、カビの除去にとても役立ちます。
植え替える
取り除いたカビ胞子が再度生える場合は、観葉植物の土を新しいものに植え替えるといいです。カビの菌糸は土の奥深くまで伸びています。根本的にカビを生やさないようにするのであれば、消毒された培養土を使うのがおすすめです。
また、カビ菌は植物の根に共生している場合もあるので、きっちりと行なうのであれば根鉢を崩してやさしく洗って掃除をするといいかもしれません。
ただし、植え替えは4〜7月の時期にしましょう。時期を間違えてしまうと、観葉植物がストレスを受けて枯れてしまう場合もあります。
日当たりと風通しの良い場所へ移動させる
カビは、気温と湿度の条件がそろわないと生えません。カビが生えるのであれば、観葉植物を日当たりと風通しの良い場所へ移動させ、カビが生えにくい環境で育てましょう。
風通しが良くなり空気が流れると、湿気がたまりにくくなるので、部屋の窓とドアは締め切らないようにしてくださいね。
観葉植物に生えるカビの予防方法
糸状菌であるカビは、土や木の奥まで根を張るため、全て取り除かないと何度も生えて出てきます。
まずは、カビが生えないように観葉植物を育てる環境を整えることが大切です。
ここでは観葉植物に生えるカビの予防法について解説します。
- 表面には無機質な土を使う
- 水はけの良い土を使う
- 日当たりと風通しが良い場所で育てる
表面には無機質な土を使う
観葉植物に発生するカビは、有機物の表面にしか生えない生物です。有機質の土を使っている場合は、表面に無機質の素材を敷き詰めてカバーをするといいです。
土の表面には、赤玉土・鹿沼土・バーミキュライト・パーライト・川砂などの無機物を使いましょう。カビが繁殖しなければ、きのこやコバエが発生することもあまりありません。
また肥料にも気を配り、化学肥料を元肥として土に入れ、植物を育てるのがおすすめです。
水はけの良い土を使う
いつまでも湿ったままの乾きにくい土は、気温と湿度の条件がそろえば、カビの繁殖が絶えません。さまざまな菌が発生しやすく、放置しているとカビが生長し、きのこも生えやすいです。
腐葉土・赤玉土・ココヤシファイバーなど、しっかりと混ぜ合わせた排水性のある土を使い、乾きやすくしましょう。
また、観葉植物に水やりや葉水をしたあとは、土をしっかりと乾かしてから再度水を与えます。土が乾燥と湿潤の状態になるようにメリハリをつけて管理することがポイントです。
ただし、排水性が良過ぎると水やりの頻度が多くなる場合も。土が乾きやすい場合は、黒土やピートモスなどを混ぜて、保水性を良くするといいです。
日当たりと風通しの良い場所で育てる
乾燥した場所には生えにくいカビなので、観葉植物の置き場所は、できるだけ日当たりと風通しを良くし、湿気がたまらないように育てましょう。
人が清潔と思えるような環境づくりをすることで、菌をはじめ細菌やウイルスも発生しにくく、病気にかかることも減ります。
実は有用。カビが観葉植物を助ける
見た目の悪さと、衛生的な面から嫌われやすいカビですが、植物の根と付いた菌(カビ)は植物の生長を助けます。
ここでは余談として、観葉植物とカビの関係について解説します。
もしかしたら、観葉植物に付くカビのことについて、少し見方が変わるかもしれませんよ。
菌は植物と共生関係
植物の先祖とされる海藻などの藻類は、古代より菌と共生できたことによって、海から陸へと上がることができたようです。
現在でもおよそ80〜90%の植物の根には、菌が共生(ドッキング)し、植物の生長を助ける役割を果たしています。
一番わかりやすいのが、エバーフレッシュやネムノキなどのマメ科の植物です。マメ科の植物の根には、「根粒菌(こんりゅうきん)」と呼ばれる真性細菌が必ず共生しています。
共生することで、お互いを助け合って生きることができ、植物は光合成をして有機物や炭素化合物をつくり、菌に供給します。その代わりとして、菌は植物が最も必要とする窒素やリン酸を送ります。
菌が観葉植物を強くする
植物の病気となる病原菌は、酸化した有機物に着くといわれています。酸性に寄り過ぎる土壌では、植物のからだが酸化して病気にかかります。
しかし、からだに付いた有効菌が十分にあると病原菌が繁殖しにくいため、植物は病気にかかりにくくなるようです。
植物は、菌に守られながら日々生きていることがよくわかります。
まとめ
観葉植物に生える白や黄色のカビ。
見た目は悪いですが、特に悪さをしているわけではなく、植物の生長を助け育ちやすい環境をつくる役割を担っています。
また、植物に付く菌やきのこがどれも悪いわけではなく、互いに助け合って生きています。
しかし室内の観葉植物なので、カビが生えないように清潔に保つことも大事です。観葉植物の置き場所を適切に選び、カビが生えなくても丈夫な株になるように育ててくださいね。